好色一代男

井原西鶴 1682年

概要

全8巻54章。裕福な町人の息子・世之介が7歳で恋に目覚めてから60歳まで、54年間の色恋遍歴を一年一章でたどる。前半は勘当されて諸国を放浪する青年期、後半は莫大な遺産を継ぎ、京・江戸・大坂・長崎などの遊里で名妓と遊ぶ姿を描く。最後は「好色丸」という船で、女だけが住むという女護島へ旅立つ。54章という構成は『源氏物語』の54帖を意識している。

時代背景

17世紀後半、大坂・京・江戸の三都では町人が経済力を持ち、遊里は流行と文化の発信地となった。大坂の俳諧師だった井原西鶴は、一昼夜に大量の句を詠む矢数俳諧で知られ、その速筆と観察眼を散文に生かした。本作の成功で「浮世草子」というジャンルが生まれ、西鶴は『好色五人女』『日本永代蔵』『世間胸算用』などを次々に書いた。

読みどころ

  1. 『源氏物語』のもじり光源氏の54帖を、町人の54年に置き換えた大胆な構成。雅な古典を俗の世界に引き下ろす遊び。
  2. 名妓たち京の吉野太夫など、実在した名妓を思わせる女性たちが登場し、当時の遊里の作法と「粋」を伝える。「京・島原」を読む →
  3. 好色丸の船出老いてなお、女護島を目指して船出する結末。現世を笑い飛ばすような、明るい虚無。「床の責道具」を読む →