大坂内本町の醤油屋、平野屋の手代である徳兵衛は、主人の甥で、まじめな働きぶりを見込まれていた。徳兵衛には、北の新地の天満屋の遊女、お初という恋人がいた。
夏の日、生玉神社の境内の茶屋で、お初は、田舎の客に連れられて観音巡りをしていた途中、偶然、徳兵衛を見かけて呼び止めた。久しぶりに会ったお初が、「なぜ会いに来てくれなかったのか」と恨み言を言うと、徳兵衛は、その間にあった苦しい事情を打ち明けた。
主人は、徳兵衛を自分の妻の姪と結婚させて、店を持たせようと考えていた。徳兵衛がお初を思って断ると、継母が勝手に結納金の銀二貫目を受け取っていたことがわかった。徳兵衛は、田舎の継母のもとへ行って、ようやく銀を取り戻した。ところが、主人は怒って、「七日のうちに銀を返せ。そして大坂から出て行け」と言い渡したのである。
ところが、その大切な銀を、徳兵衛は、親友の油屋九平次に、「三日だけ」と頼まれて貸してしまっていた。
ちょうどそこへ、九平次が仲間を連れて通りかかった。徳兵衛が銀を返してくれるよう言うと、九平次は、「銀など借りた覚えはない」と、しらを切った。徳兵衛が証文を見せると、九平次は、「その印判は、自分が落としたと届け出たものだ。お前が拾って偽の証文を作ったのだろう」と言い張った。
徳兵衛はつかみかかったが、多勢に無勢、九平次の仲間たちにさんざんに殴られ、踏みつけられてしまった。人々の前で、偽証文を作った罪人という汚名を着せられた徳兵衛は、「この無念を晴らすには、死んで身の潔白を証明するほかない」と、泣きながら言い、その場を去った。お初は、客に連れられて駕籠に押し込められ、泣く泣く帰っていった。