雪国では、山に積もった雪が崩れ落ちることを、「なだれ」という。私たちの土地では、「雪頽」と書く。
雪頽は、冬の終わりから春先、雪が緩みはじめるころに多く起こる。山の上に積もった大量の雪が、轟音とともに一気に崩れ落ち、木々をなぎ倒し、谷を埋め尽くす。その勢いは、大きな岩をも吹き飛ばすほどである。
雪頽に巻き込まれた人は、ほとんど助からない。雪の下に埋もれた人を掘り出そうとしても、どこに埋まっているのかもわからず、見つけ出したときには、すでに息絶えていることが多い。
江戸へ通じる三国街道は、越後から上州へと三国峠を越えていく。冬の山越えの道は、深い雪に埋もれ、雪頽の危険にさらされる。旅人たちは、雪頽の起こりやすい場所では、声を立てず、足早に通り過ぎたという。大きな音を立てると、雪頽を誘うと信じられていたからである。
雪国に住む人々は、雪頽の恐ろしさを身にしみて知っている。雪は、家をつぶし、道を閉ざし、ときに人の命まで奪う。暖かい国の人々が、雪を眺めて楽しむのとは、まったく違うのである。