宇治

橋姫巻〜夢浮橋巻(宇治十帖)

光源氏が亡くなって後、物語の舞台は都から宇治へと移る。源氏の子とされる薫(実は柏木の子)は、自分の出生の秘密にうすうす気づき、生まれつき体からよい香りのする人であったが、世をはかなむ心が強かった。

薫は、宇治の山里で仏道修行に励む八の宮(源氏の異母弟)を慕って、宇治へ通うようになった。晩秋のある夜、有明の月のもとで、薫は八の宮の二人の姫君、大君と中の君が琵琶と箏を弾いている姿を垣間見て、心を奪われた。

八の宮が亡くなると、薫は姉の大君に思いを寄せるが、大君は妹の中の君と薫を結ばせようとし、自らは独身を貫こうとする。一方、中の君は、薫の親友で源氏の孫にあたる匂宮と結ばれた。しかし匂宮は、身分柄、なかなか宇治へ通えない。大君は、妹の不幸を嘆き、男を信じられないまま、病に伏して亡くなった。

大君を失った薫の前に現れたのが、大君によく似た異母妹の浮舟であった。薫は浮舟を宇治に住まわせるが、匂宮もまた浮舟に近づき、雪の中、小舟で宇治川を渡って、対岸の家で二人だけの時を過ごした。「橘の小島の色は変はらじをこのうき舟ぞゆくへ知られぬ」。二人の男の間で苦しんだ浮舟は、激しく流れる宇治川に身を投げようと、夜の闇に姿を消した。

浮舟は、実は横川の僧都に助けられ、小野の山里で出家していた。そのことを知った薫は手紙を届けさせるが、浮舟は「人違いでしょう」と、会おうとしなかった。物語は、そこで静かに幕を閉じる。宇治橋のたもとには、今も紫式部の像が立っている。

宇治 薫と匂宮、大君・中の君・浮舟をめぐる「宇治十帖」の舞台。
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