八 世の住みにくさ

方丈記 現代語訳
原文現代語訳

すべて世の中の生きにくさ、わが身と住まいとがはかなく頼りないさまは、このようなものである。まして住む場所により、身分に応じて心を悩ませることは、数えあげることもできない。

もし自分が取るに足らない身分で、権力者のそばに住んでいれば、深く喜ぶことがあっても、大きな声で楽しむことはできない。嘆きがあるときも、声をあげて泣くこともできない。ふるまいも落ち着かず、立ち居につけて恐れおののくさまは、たとえれば、雀が鷹の巣に近づいたようなものだ。

もし貧しくて、裕福な家の隣に住んでいれば、朝晩みすぼらしい姿を恥じて、へつらいながら出入りする。妻子や召使いがうらやむ様子を見るにつけ、裕福な家の人が自分を見下す様子を聞くにつけ、心は絶えず揺れ動いて、少しも安らかなときがない。

もし狭い土地に住めば、近くで火事が起こったとき、その災いを逃れることができない。もし辺鄙な土地に住めば、行き来の苦労が多く、盗賊の心配から逃れにくい。

勢いのある者は欲が深く、身寄りのない者は人に軽んじられる。財産があれば心配が多く、貧しければ嘆きが切実だ。人を頼れば身は他人の言いなりになり、人を養えば心は愛情にとらわれる。世の中に従えば身が苦しい。従わなければ、気が狂っているように見られる。

いったいどんな所に住み、どんなことをすれば、しばらくでもこの身を落ち着け、ほんのひとときでも心を安らかにできるのだろうか。

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