十六 結び

方丈記 原文
原文現代語訳

しづかなる曉、このことわりを思ひつゞけて、みづから心に問ひていはく、世をのがれて山林にまじはるは、心ををさめて道を行はむがためなり。然るを汝が姿はひじりに似て、心はにごりにしめり。すみかは則ち淨名居士のあとをけがせりといへども、たもつ所はわづかに周梨槃特が行にだも及ばず。もしこれ貧賤の報のみづからなやますか、はた亦妄心のいたりてくるはせるか、その時こゝろ更に答ふることなし。たゝかたはらに舌根をやとひて不請の念佛、兩三返を申してやみぬ。時に建暦の二とせ、彌生の晦日比、桑門蓮胤、外山の庵にしてこれをしるす。

「月かげは入る山の端もつらかりきたえぬひかりをみるよしもがな」。

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