たふとき聖のいひおきけることを書きつけて、一言芳談とかや名づけたる草紙を見侍りしに、心に會ひて覺えし事ども。
一爲やせまし、爲ずやあらましと思ふことは、おほやう爲ぬはよきなり。
一後世を思はむものは、糂汰瓶一つも持つまじきことなり。持經、本尊にいたるまで、よき物を持つ、よしなきことなり。
一遁世者は、なきに事かけぬやうをはからひて過ぐる、最上のやうにてあるなり。
一上臈は下臈になり、智者は愚者になり、徳人は貧になり、能ある人は無能になるべきなり。
一佛道を願ふといふは、別のこと無し、暇ある身になりて、世のこと心にかけぬを、第一の道とす。
この外も、ありし事ども、覺えず。