第7話神話・歴史抄訳

古事記

中巻「倭建命の最期」

舞台 伊吹山(滋賀県)
成立 712年 作者 太安万侶(稗田阿礼 誦習)

原文倭は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭しうるはし

現代語訳

東国を平定して尾張に戻ったヤマトタケルは、美夜受比売と結婚した。そして草那芸剣を姫のもとに置いたまま、伊服岐(伊吹山)の神を討ちに出かけた。「この山の神など素手で討ち取ってやろう」と言って山に登ると、牛ほどもある白い猪に出会った。

タケルは声高に言い立てた。「この白い猪は山の神の使いだろう。今殺さずとも、帰りに殺してやろう」。しかしその猪こそ山の神そのものであった。言挙げして神を侮ったため、激しい雹が降りかかり、タケルは惑わされて正気を失ってしまった。

山を下りて玉倉部の清水で休むと、ようやく少し正気に戻った。そこでこの泉を居寤の清水という。しかし体はすっかり弱っていた。当芸野では「足がたぎたぎしく(こわばって)、歩けなくなった」と言い、杖をついて坂を越え、三重では「足が三重に曲がった餅のように疲れた」と言った。

能煩野にたどり着いたタケルは、故郷を思って歌った。「大和は国の中で最もすぐれた所だ。重なり合う青い垣根のような山々に囲まれた、大和こそ美しい」。さらに幾首か歌い、「乙女の床のそばに置いてきた、あの大刀よ」と歌い終えるとすぐに息絶えた。

知らせを受けた后や御子たちは大和から駆けつけ、陵を造って泣き伏した。するとタケルの魂は大きな白い鳥となって天を翔け、浜へ向かって飛んでいった。人々は泣きながらその後を追った。

地点メモ:ヤマトタケルが山の神の祟りを受け、衰弱して能煩野で没する。
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