第108話物語抄訳・要確認

御伽草子

「物くさ太郎」(前半)

舞台 あたらしの郷(信濃)(長野県)
成立 室町時代(刊行は江戸中期) 作者 作者未詳

現代語訳

信濃の国、筑摩郡のあたらしの郷に、物くさ太郎ひじかすという、たいへんな怠け者がいた。家を建てるのも面倒で、四本の竹を立て、むしろをかけただけの小屋に住んでいた。手足はあかで汚れ、着物はぼろぼろ、ノミやシラミだらけであった。

ある日、太郎は、人から餅を五つもらった。四つを食べ、残りの一つを大事にしていたが、うっかり手からこぼれて、道の真ん中まで転がっていってしまった。太郎は、拾いに行くのも面倒で、誰か通りかかったら取ってもらおうと、三日もの間、じっと寝転んで待っていた。

そこへ、この土地の地頭、あたらしの左衛門尉のぶよりが、鷹狩りの帰りに通りかかった。太郎は、「そこのお方、その餅を取ってくださいな」と声をかけた。地頭は、「これほどの怠け者は見たことがない。こんな男がどうやって暮らしているのか」とあきれながらも面白がり、郷の人々に、「この男に、毎日三度の食事と酒を与えて養え」と命じた。

三年ほどたったころ、郷に、都へ長夫(長期間の労役)を一人出すようにとの命令が下った。郷の人々は相談して、「あの物くさ太郎を出そう」と決めた。太郎は、「都は面白いところだと聞く」と、案外すなおに引き受けて、都へ上っていった。

地点メモ:「物くさ太郎」— 道に落ちた餅も拾わない怠け者。のちに信濃の中将となって故郷に帰る。
※この話は細部に記憶違いを含むおそれがあります。引用・公開の際は原典と照合してください。
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