判官切腹の段

四段目「判官切腹の段」「城明け渡しの段」

殿中での刃傷の罪により、塩冶判官は、切腹を命じられた。判官は、白装束に身を包み、切腹の座についた。見届けの上使として、石堂右馬之丞と薬師寺次郎左衛門がやって来ている。

判官は、国元から駆けつけるはずの家老、大星由良助を待っていた。「由良助は、まだか」「いまだ参上いたしません」。何度尋ねても、由良助は来ない。ついに時刻となり、判官は、九寸五分の短刀を腹に突き立てた。

そのとき、花道から、由良助が息を切らして駆けつけてきた。「由良助、待ちかねたわ」「ははっ」。判官は、苦しい息の下から、由良助に、自分の腹を切った短刀を形見として渡し、無言のうちに「この刀で、師直を討て」と、無念を託した。そして、息を引き取った。

由良助は、主君の血に染まった短刀をじっと見つめ、その切っ先についた血をなめて、仇討ちを心に誓った。

判官の亡骸を送り出した後、屋敷の明け渡しが行われた。家臣たちの中には、「すぐにでも師直の屋敷に討ち入るべきだ」と主張する者もいたが、由良助は、それを抑えて、「今は、ひとまず城を明け渡すのだ」と言い聞かせた。

門の外に出た由良助は、城を振り返り、懐から形見の短刀を取り出して、ひとり、じっとそれを見つめた。ここで幕となる。

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史実では、浅野家の取りつぶしが決まると、国元の赤穂城では、籠城か、殉死か、開城かをめぐって、激しい議論が交わされた。筆頭家老の大石内蔵助は、浅野家再興の望みをつなぐため、城を無血で明け渡すことを決めた。その一方で、ひそかに主君の仇を討つ決意を固め、同志を募っていった。

赤穂城跡には、今も大石内蔵助の屋敷の長屋門が残り、隣接して、四十七士を祀る大石神社が建っている。

赤穂城 城明け渡し。大星由良助(大石内蔵助)が仇討ちを誓う。
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