越後縮は、魚沼郡の名産で、苧麻(からむし)の糸で織る上等の麻織物である。
縮を作る仕事は、雪の季節に行われる。秋に刈り取った苧麻の皮から繊維を取り出し、冬の間、雪に閉ざされた家の中で、女たちがそれを細く裂いて、爪の先で一本一本つないで糸にする。これを「苧績み(おうみ)」という。気の遠くなるような根気のいる仕事である。
糸ができると、機にかけて布を織る。越後の縮は、湿り気の多い空気の中でなければ、糸が切れやすく、うまく織ることができない。雪に閉ざされた冬の家の中は、ちょうどよい湿り気があって、縮を織るのに適しているのである。
織り上がった布は、雪解け水で洗い、晴れた日に雪の上に広げて晒す。これを「雪晒し」という。雪の上に布を広げておくと、日の光と、雪が解ける時に生まれる気の働きで、布は白く美しくなる。春先、一面の雪原に白い布が並ぶ様子は、雪国ならではの眺めである。
雪の中で糸にし、雪の中で織り、雪の水で洗い、雪の上に晒す。雪があるからこそ、縮がある。越後縮は、雪と、人の根気とが相半ばして生まれる名産なのである。魚沼郡の雪は、縮の親と言うべきである。