八月十五日が近づくと、かぐや姫は月を見てはひどく泣くようになった。翁が問いただすと、姫は「私はこの国の人ではありません。月の都の者です。この十五日に、迎えの人々がやって来ます」と打ち明けた。
帝はこれを聞くと、六衛府の兵士二千人を翁の家に遣わした。築地の上に千人、屋根の上に千人を配し、家の者たちとともにすき間なく守らせた。翁は塗籠(周りを壁で囲った部屋)の戸を閉ざして姫を抱きかかえ、嫗がそれを守った。翁は「迎えが来たら、爪で目玉をつかみつぶし、髪をつかんで引きずり落としてやる」と息巻いたが、姫は「そんなことをおっしゃらないで。どんなに固く閉ざしても、あの国の人には勝てません」と言った。
夜も更けた子の刻ごろ、家の周りが昼よりも明るく光り輝いた。空から雲に乗った人々が降りてきて、地上から五尺ほどの高さに立ち並んだ。兵士たちは物に襲われたように戦う気力を失い、弓を引こうとしても手に力が入らず、ただぼんやりと見つめ合うばかりであった。
天人の王らしき者が「翁よ、出て来い」と呼ぶと、閉ざしていた塗籠の戸がひとりでに開き、姫は外へ出ていった。姫は泣き伏す翁に手紙を書き残し、帝にも文と不死の薬を託した。天人が天の羽衣を着せようとすると、姫は「少し待って」と言って、帝への歌を書き添えた。「今はもう天の羽衣を着るというときになって、あなたのことをしみじみと思い出すのです」。
天の羽衣を着せられると、翁をいとおしく思っていた心も消えてしまった。姫は飛ぶ車に乗り、百人ほどの天人を従えて、天へと昇っていった。