賀茂の祭・賀茂へ詣づる道

第二〇六段ほか「賀茂の祭・賀茂へ詣づる道」

五月ごろに山里へ出かけて歩くのは、たいそう趣がある。草の葉も水もたいそう青々と一面に見えているところを、上はさりげなく草が生い茂っているのに、長々と縦にまっすぐ進んでいくと、下はなんとも言えない澄んだ水が、深くはないけれど、人が歩くにつれて水しぶきが跳ね上がるのが、たいそう趣深い。

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祭のころは、何もかもすばらしい。四月、賀茂の祭(葵祭)のころはとても趣がある。上達部や殿上人も、袍の色の濃い薄いだけが違って、白襲などは同じようで涼しげに見える。木々の葉がまだそれほど茂っておらず、若々しく青いところに、霞も霧も隔てない空の様子が、何となくすばらしい。少し曇った夕方や夜など、忍んで鳴くほととぎすが、遠くで聞き違えたかと思うほどかすかに聞こえるのを耳にしたときの気持ちは、何にたとえようか。

祭の日が近づくと、青朽葉や二藍の反物を巻いて、紙などにほんの形ばかり包んで、行き来して持ち歩くのも趣がある。末濃、むら濃などの染め物も、いつもよりは面白く見える。

賀茂社へ参る道に、田植えをするというので、女たちが新しい折敷のような物を笠にかぶって、大勢立って歌を歌っている。体を折り曲げるようにして、何をするとも見えないで後ろへ下がっていく。何のためだろうかと見ていると、ほととぎすをひどく無礼に悪口を言って歌う声を聞くのも、気がふさぐ。「ほととぎす、おまえ、あいつめ、おまえが鳴くから私は田に立つのだ」と歌うのを聞くと、ほととぎすを大事に思っている人にとっては、なんとも心外なことである。

上賀茂神社 賀茂祭(葵祭)の華やかな行列を描く。
要確認:細部に記憶違いを含むおそれがあります。
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