十五 佐藤庄司の舊跡

おくのほそ道 原文
原文現代語訳

月の輪のわたしを越(こえ)て、瀬の上と云(いふ)宿(しゆく)に出づ。佐藤庄司が旧跡は左の山際(やまぎは)一里半斗(ばかり)に有(あり)。飯塚(いひづか)の里鯖野(さばの)と聞(きき)て尋(たづね)〳〵行(ゆく)に、丸山と云(いふ)に尋(たづね)あたる。是(これ)庄司が旧舘(きうくわん)也、麓(ふもと)に大手(おほて)の跡など人の教ゆるにまかせて泪(なみだ)を落し、又かたはらの古寺(ふるでら)に一家(いつけ)の石碑(せきひ)を殘す。中にも二人の嫁がしるし先(まづ)哀(あはれ)也。女なれどもかひ〴〵しき名の世に聞えつる物かなと袂(たもと)をぬらしぬ。墜涙の石碑も遠きにあらず。寺に入(いり)て茶を乞へば、爰(ここ)に義經(よしつね)の太刀辨慶(べんけい)が笈(おひ)をとゞめて什物(じふもつ)とす、

笈(おひ)も太刀も五月(さつき)にかざれ紙幟(かみのぼり)

五月(さつき)朔日(ついたち)の事也。

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