十六 飯塚

おくのほそ道 原文
原文現代語訳

其夜(そのよ)飯塚(いひづか)にとまる。温泉(いでゆ)あれば湯に入(いり)て宿をかるに、土坐(どざ)に莚(むしろ)を敷(しき)てあやしき貧家也。灯(ともしび)もなければゐろりの火(ほ)かげに寢所(ねどころ)をまうけて臥(ふ)す。夜に入(いり)て雷鳴(かみなり)雨しきりに降(ふり)て臥(ふせ)る上(うへ)よりもり、蚤蚊にせゝられて眠らず。持病(ぢびやう)さへおこりて消入斗(きえいるばかり)になん。短夜(みじかよ)の空もやう〳〵明(あく)れば、又旅立(たびだち)ぬ。猶(なほ)夜(よる)の余波(なごり)心すゝまず、馬かりて桑折(こをり)の驛に出(いづ)る。遙(はるか)なる行末(ゆくすゑ)をかゝえて、斯(かか)る病(やまひ)覺束(おぼつか)なしといへど、羇旅(きりよ)邊土(へんど)の行脚(あんぎや)、捨身(しやしん)無常(むじやう)の觀念(くわんねん)、道路(だうろ)にしなん、是(これ)天(てん)の命(めい)なりと氣力聊(いささか)とり直(なほ)し、路(みち)縱横(じゆうわう)に踏(ふん)で伊達(だて)の大木戸(おほきど)をこす。

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