尾花沢で清風という人を訪ねた。この人は富豪であるが、心ばえは卑しくない。都にもたびたび行き来して、さすがに旅の情けも知っているので、何日も引き留めて、長旅の疲れをいたわり、さまざまにもてなしてくれた。
凉しさを我宿にしてねまる也
(この家の涼しさを自分の家のように思って、くつろいで座っていることだ)
這出よかひやが下のひきの声
(蚕室の床下で鳴いているひきがえるよ、出てきて姿を見せておくれ)
まゆはきを俤にして紅粉の花
(紅花の咲くさまを見ると、女性が化粧に使う眉掃きが面影に浮かぶ)
蚕飼する人は古代のすがた哉 曾良
(蚕を飼う人々の素朴な姿は、まるで古代の人のようだ)