筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなる者のありけるが、土大根を萬にいみじき藥とて、朝ごとに二つづゝ燒きて食ひける事、年久しくなりぬ。ある時、館のうちに人もなかりける隙をはかりて、敵襲ひ來りて圍み攻めけるに、館の内につはもの二人出できて、命を惜しまず戰ひて、皆追ひかへしてけり。いと不思議におぼえて、「日頃こゝにものし給ふとも、見ぬ人々のかく戰ひしたまふは、いかなる人ぞ。」と問ひければ、「年來たのみて、あさな〳〵めしつる土大根らに候。」といひて失せにけり。深く信を致しぬれば、かゝる徳もありけるにこそ。
六十八 筑紫に
徒然草 原文
原文現代語訳