第9話神話・歴史抄訳・要確認

古事記

上巻「稲羽の素兎」

舞台 白兎海岸(気多の岬)(鳥取県)
成立 712年 作者 太安万侶(稗田阿礼 誦習)

現代語訳

オオクニヌシの神には、八十神と呼ばれる大勢の兄弟がいた。兄弟たちは、みな因幡の国のヤガミヒメを妻にしたいと思い、そろって因幡へ出かけていった。オオクニヌシは、兄たちの大きな袋を背負わされ、従者として一行の後ろからついていった。

気多の岬まで来ると、一匹の兎が、毛をすっかり剥がれて、赤裸のまま倒れ伏していた。兄たちは、「海の水を浴びて、風の当たる高い山の尾根に寝ているがよい」と教えた。兎がそのとおりにすると、潮が乾くにつれて皮膚がひび割れ、痛くてたまらず、泣き伏していた。

あとから来たオオクニヌシが、「なぜ泣いているのか」と尋ねると、兎はこう答えた。「私は隠岐の島にいて、こちらへ渡りたいと思いましたが、渡る手立てがありません。そこで海のワニ(サメ)をだまして、『おまえたちと私と、どちらの一族が多いか比べよう。できるだけ仲間を集めて、この島から気多の岬まで並んで伏してくれ。私がその上を踏んで数えよう』と言いました。ワニたちが並ぶと、私はその背を踏んで数えながら渡ってきましたが、もう少しで陸に下りるというところで、『おまえたちはだまされたのだ』と言ってしまいました。すると、いちばん端のワニが私を捕らえて、着物をすっかり剥いでしまったのです。泣いていると、先に通った神々が海水を浴びよと教えてくださり、そのとおりにしたら、体中が傷だらけになりました」。

オオクニヌシは、「今すぐ河口へ行って、真水で体を洗い、そこに生えている蒲の穂を取って敷き散らし、その上を転がれば、きっと元の肌に戻るだろう」と教えた。兎がそうすると、体はすっかり元どおりになった。これが稲羽の素兎で、今は兎神と呼ばれている。

兎はオオクニヌシに告げた。「あの八十神たちは、決してヤガミヒメを得ることはできません。袋を背負っておいでですが、姫を得るのはあなたさまです」。果たしてヤガミヒメは、八十神の求婚を退けて、「私はオオクニヌシの神に嫁ぎます」と答えた。

鳥取市の白兎海岸には、沖に兎が渡ってきたという淤岐ノ島が浮かび、浜の上には兎を祀る白兎神社が建っている。

地点メモ:因幡の白兎。ワニをだまして皮を剥がれた兎を、オオクニヌシが蒲の穂で癒やす。
※この話は細部に記憶違いを含むおそれがあります。引用・公開の際は原典と照合してください。
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