第165話暮らし・民俗抄訳・要確認
東の小結・信州諏訪(番付解説・伝承)
東の小結に据えられたのは、信州(長野県)の諏訪の湯である。
諏訪湖のほとりには、上諏訪と下諏訪に、豊かな湯が湧いている。とくに下諏訪は、中山道と甲州街道が出会う宿場町で、旅人たちは、宿場の湯で旅の疲れを癒やした。
下諏訪の湯には、「綿の湯」という美しい伝説が伝わっている。
諏訪大社の上社には、建御名方神という男神が祀られ、下社には、その妃である八坂刀売神が祀られている。昔、八坂刀売神が、上社から下社へ移り住むことになったとき、毎朝化粧に使っていた湯を、綿に含ませて持っていった。そして、下社の近くにその綿を置いたところ、そこから温かい湯が湧き出した。これが綿の湯の始まりであるという。
また、女神が綿を運ぶ途中、しずくが落ちたところからも湯が湧き出したとも伝えられている。
諏訪は、冬には湖が凍りつき、氷の裂け目が走る「御神渡り」が見られる寒さの厳しい土地である。その寒さの中で、温かい湯は、人々の暮らしに欠かせないものであった。