古事記

太安万侶(稗田阿礼 誦習) 712年

概要

712年、元明天皇に献上された三巻の書。天武天皇の命で稗田阿礼が誦み習った「帝紀」「旧辞」を、太安万侶が書き整えた。上巻は神々の時代、中巻は神武天皇から応神天皇、下巻は仁徳天皇から推古天皇まで。漢字の音と訓を組み合わせ、日本語の語りの調子をできるだけ残そうとした文体に特色があり、百首を超える歌謡も含む。

時代背景

7世紀後半、壬申の乱に勝った天武天皇は律令国家づくりを進めるなかで、諸氏族に伝わる系譜や伝承の食い違いを正し、天皇家の由来を一本の物語にまとめようとした。完成は平城京遷都(710年)の2年後。国内に向けて天皇統治の由来を語る書であり、ほぼ同じ時期に、対外的な正史として『日本書紀』が編まれている。中世までは『書紀』ほど読まれず、江戸時代に本居宣長が『古事記伝』で注釈してから、古典として重んじられるようになった。

読みどころ

  1. 神々の人間くささ泣きわめき、暴れるスサノオが、出雲では八俣の大蛇を退治する英雄になる。神々が喜怒哀楽をむき出しにして動く。「八俣の大蛇」を読む →
  2. 出雲の物語群八俣の大蛇から稲羽の素兎、国譲りまで、上巻の大きな部分を出雲が占める。ヤマトに国を譲った側の物語として読むと味わいが増す。「国譲り」を読む →
  3. ヤマトタケルの最期父に疎まれ、休む間もなく東へ西へ遠征を命じられた皇子が、伊吹山の神に打たれて倒れ、「倭は国のまほろば」と故郷を偲ぶ。古代の英雄譚の白眉。「倭建命の最期」を読む →
  4. 地名の由来多くの話が「それでこの地を〜という」と結ばれる。いまの地名と重ねて読むと、神話が土地に根を下ろしているのがわかる。