三 雪の深浅

北越雪譜 原文
原文現代語訳

左伝に(隠公八年)平地(へいち)尺(しやく)に盈(みつる)を大雪と為(す)と見(み)えたるは其国(そのくに)暖地(だんち)なれば也。唐(たう)の韓愈(かんゆ)が雪を豊年(ほうねん)の嘉瑞(かずゐ)といひしも暖国(だんこく)の論(ろん)也。されど唐土(もろこし)にも寒国は八月雪降(ふる)事五雑組(ござつそ)に見えたり。暖国の雪一尺以下ならば山川村里(さんせんそんり)立地(たちどころ)に銀世界(ぎんせかい)をなし、雪の飄々(へう〳〵)翩々(へん〳〵)たるを観(み)て花に諭(たと)へ玉に比(くら)べ、勝望美景(しようばうびけい)を愛(あい)し、酒食(しゆしよく)音律(おんりつ)の楽(たのしみ)を添(そ)へ、画(ゑ)に写(うつ)し詞(ことば)につらねて称翫(しようくわん)するは和漢(わかん)古今の通例(つうれい)なれども、是(これ)雪の浅(あさ)き国(くに)の楽(たのし)み也。我(わが)越後のごとく年毎(としごと)に幾丈(いくぢやう)の雪を視(み)ば何(なん)の楽(たのし)き事かあらん。雪の為(ため)に力(ちから)を尽(つく)し財(ざい)を費(つひや)し千辛(しん)万苦(く)する事、下(しも)に説(と)く所(ところ)を視(み)ておもひはかるべし。

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