春の雪は消えやすいので沫雪(あわゆき)という。日本でも中国でも、春の雪が消えやすいことを詩歌の題材にしているが、それは暖かい国のことである。寒い国の雪は、冬のものこそ沫雪と言うべきだ。なぜなら、冬の雪はどれほど積もっても固まらず、泥のようにもろく柔らかい。だから冬の雪の中は「かんじき」や「すかり」をはいて道を行く。土地の言葉では「雪を漕ぐ」という。水を渡るさまに似ているからだろうか。深い田んぼを行く姿にも似ている。
初春になると雪はすっかり凍りつき、雪道は石を敷いたようになるので、行き来は冬より楽になる(すべらないよう下駄の歯に釘を打って使う)。暖かい国の沫雪とは、季節の順序がこのように逆なのである。