冬の雪はもろいので、人が踏み固めた跡を行くのは楽だが、旅人が一晩泊まった夜に大雪が降ると、踏み固めた一筋の雪道が埋まって道がわからなくなる。野原に出ると方角も見分けられない。こういうときは里の者を何十人も雇い、かんじきやすかりで道を踏み開かせ、その跡について行く。これには何さしもの銭がかかるので、貧しい旅人は、ほかの人が道を開かせるのを待って、むなしく時を過ごすこともある。足の強い飛脚でさえ、雪道は一日に二、三里しか進めない。かんじきで足が自由にならず、雪が膝を越すからである。これが冬の雪のひとつの難儀である。
春は雪が凍って鉄や石のようになるので、雪車(そり。「雪舟」の字も使う)で重い物を運ぶ。里の人はそりに物を載せ、自分も乗って、雪の上を舟のように進む。雪の中では牛馬は足が立たないので、すべてそりを使う。春の雪の上で重い物を運ばせるには、牛馬よりもすぐれている(そりの作り方は別に記す。形や大きさはいろいろあり、大きなものを修羅という)。雪国で一番便利な道具である。ただし雪が凍っているときでないと使えない。それで里の人は、この時期を「雪舟道(そりみち)」と呼ぶ。