冬の雪は脆なるゆゑ人の蹈固たる跡をゆくはやすけれど、往来の旅人一宿の夜大雪降ばふみかためたる一条の雪道雪に埋り途をうしなふゆゑ、郊原にいたりては方位をわかちがたし。此時は里人幾十人を傭ひ、橇縋にて道を蹈開せ跡に随て行也。此費幾緡の銭を費すゆゑ貧しき旅人は人の道をひらかすを待て空く時を移もあり。健足の飛脚といへども雪途を行は一日二三里に過ず。橇にて足自在ならず、雪膝を越すゆゑ也。これ冬の雪中一ツの艱難なり。春は雪凍て銕石のごとくなれば、雪車(又雪舟の字をも用ふ)を以て重を乗す。里人は雪車に物をのせ、おのれものりて雪上を行事舟のごとくす。雪中は牛馬の足立ざるゆゑすべて雪車を用ふ。春の雪中重を負しむる事牛馬に勝る。(雪車の制作別に記す、形大小種々あり大なるを修羅といふ)雪国の便利第一の用具也。しかれども雪凍りたる時にあらざれば用ひがたし、ゆゑに里人雪舟途と唱ふ。
十一 雪道
北越雪譜 原文
原文現代語訳