四十九 鮏の食用

北越雪譜 原文
原文現代語訳

腥(なま)にて喰(しよく)するは○魚軒(さしみ)○鱠(なます)○鮓(すし)也。○烹(に)る○炙(やく)その料理(れうり)によりて猶あるべし。醃(しほづけ)にしたるを塩引(しほびき)また干鮏(からさけ)といひしも古き事、まへに引たる書(しよ)に見えたるがごとし。延喜式(えんぎしき)にのせたる内子鮏は今いふ子籠(ここも)り鮏の事なるべし。又同書(どうしよ)に脊腸(せのはらわた)をみなわたと訓(よめ)り。丹後信濃越中越後より貢(みつぎ)とする㕝も見えたれば、古代(ふるきよ)は鮏(さけ)を供御(くご)にも奉りたるなるべし。都(みやこ)へ遠(とほ)きよりみつぎたれば塩引(しほびき)ならん。頭骨(かしらのほね)の澄徹(すきとほる)ところを氷頭(ひづ)とて鱠(なます)に雅(が)也。子を鮞(はらゝご)といふ、これを醃(しほ)にしたるも美味(びみ)也。子あるまゝを塩引にしたるを子籠(ここも)りといふ、古へのすはよりといひしも是ならんか。本草に鮏(さけ)味(あぢ)はひ甘(うま)く微温(やはらか)毒(どく)なし、主治(きゝみち)中(うち)を温(あたゝ)め気(き)を壮(さかん)にす、多く喰(くら)へば痰(たん)を発(おこ)すといへり。我国にて塩引にしたるを大晦日(おほつごもり)の節(せち)には用ひざる家なし。又病人にも喰(くは)す。他国にて腫物(できもの)にいむは、これになれざるゆゑにやあらん。

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