五十三 掻網

北越雪譜 原文
原文現代語訳

かきあみとは攩網(すくひだま)なり、鮏を攩(すく)ひ捕(と)るをいふ。その攩(すく)ひ網(だま)の作りやうは又ある木の枝(えだ)を曲(ま)げあはせて飯櫃(いひびつ)なりに作りこれに網(あみ)の帒(ふくろ)をつけ、長き柄(え)ありてすくふたよりとす。岸(きし)の阻(そばだち)たる所は鮏岸(きし)につきてのぼるものゆゑ、岸に身(み)を置(おく)ばかりの架(たな)をかきて、こゝに居(ゐ)て腰(こし)に魚楑(なつち)をさし鮏を掻探(かきさぐ)りてすくひとるなり。岸の絶壁(ぜつへき)なる所は木の根に藤縄(ふぢなは)をくゝして架(たな)を鉤(つ)り、こゝに居(ゐ)て掻網(かきあみ)をするも稀(まれ)にあり。幾尋(いくひろ)ともなき深淵(ふかきふち)の上にこのたなをつりて身(み)を置(おき)、一条(ひとすぢ)の縄(なは)に命(いのち)をつなぎとめてその業(わざ)をなす事、怖(おそろ)しともおもはざるは此事になれたるゆゑなるべし。

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