さけのすばしりは雪前に河原などにある事也。かれあみにせめられ人にも追はれなどして、水を飛離れて河原にのぼり、網ある所をこえて水にとび入りてあみを退るゝ也。此時は大鮏さきにすゝみて水をはなるれば、よりゐたる小鮏など后に随ひてのぼり、河原をはしる事四五間にすぎざれども、箭のごとくして人の足もおよびがたし。さきにすゝむ大鮏、もし物にさはりて横に倒るゝ時は、あとにしたがひたる鮏もおなじくたふれてふたゝびおきず、人の捕るを俟がごとし。はからずして手も濡さず二三頭のさけをうる事あり。かれ足無して地をはしり、倒れてふたゝび起ざるなど、魚族中比ふべきものなきは奇魚といふべし。
五十七 鮏の洲走り
北越雪譜 原文
原文現代語訳