我が上越後は山岳つらなれば滝多し。滝ある所に夏木の大樹ありて、春にいたり枝につもりし雪まづとけて葉をいださぬ木の森をなしたるに、滝の水烟枝に潤ひしが津となり氷柱となりて玉簾をかけ周したるやうなるは、これも又たぐふべきものなし。さてまたその滝にもしたゝる水氷柱となり、玉簾の内に滝をおとすありさま四辺は乱瓊細玉の雪中也、かの玉を出といふ崑山もかくやとおもはる。かゝる奇景も猟師樵夫のほか見る人稀也。これを暖国の人にみせなばいかにめづらしとかおもふらん。牧之柏崎より妻有の庄へ山越したる時目前に見たる所也。
六十 滝の氷柱
北越雪譜 原文
原文現代語訳