六十 滝の氷柱

北越雪譜 原文
原文現代語訳

我が上越後は山岳(さんがく)つらなれば滝多し。滝ある所に夏木の大樹ありて、春にいたり枝(えだ)につもりし雪まづとけて葉をいださぬ木の森をなしたるに、滝の水烟(すゐゑん)枝(えだ)に潤(うるほ)ひしが津(しづく)となり氷柱(つらゝ)となりて玉簾(たまのすだれ)をかけ周(めぐら)したるやうなるは、これも又たぐふべきものなし。さてまたその滝にもしたゝる水氷柱(つらゝ)となり、玉簾(ぎよくれん)の内に滝をおとすありさま四辺(あたり)は乱瓊(らんけい)細玉(さいぎよく)の雪中也、かの玉を出といふ崑山(こんざん)もかくやとおもはる。かゝる奇景(きけい)も猟師(れふし)樵夫(せうふ)のほか見る人稀(まれ)也。これを暖国(だんこく)の人にみせなばいかにめづらしとかおもふらん。牧之(ぼくし)柏崎(かしはざき)より妻有(つまり)の庄へ山越(こえ)したる時目前に見たる所也。

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