六十八 童の雪遊び

北越雪譜 原文
原文現代語訳

我があたりはしば〳〵いへるごとく、およそ十月より翌年(よくとし)の三月すゑまでは歳(とし)を越(こえ)て半年は雪也。此なかに生(うま)れ、此なかに成長(せいちやう)するゆゑ、わらべの雪遊びをなす事さま〴〵ありて、暖国(だんこく)にはなき事多し。その中に暖国の人にはおもひもよらざるあそびあり、まづ雪を高く掘揚(ほりあげ)おきたる上などを童(わらべ)ども打よりて手(て)あそびの木鋤(こすき)にて平らになしてふみつけ、(わらべも雪中にはわらくつをはくこと雪国のつねなり)さて雪をあつめて土塀(とへい)を作るやうによほどの囲(かこみ)をつくりなし、その間(あは)ひにも雪にて壁(かべ)めく所をつくり、こゝに入り口をひらきて隣(となり)の家(いへ)とし、すべての囲(かこみ)にも入り口をひらく。此内に宮めかす所を作り、まへに階(だん〳〵)をまうけ宮の内に神の御体(みすがた)とも見ゆるやうにつくりすゑ、これを天神さまと称(しよう)し(ゑびす大こくなどもつくる)筵(むしろ)などしきつめ物を煮(に)べき所をも作る。すべてみな雪にて作りたつる也。(雪をくぼめ、ぬかをしきて火をたくに、きゆる事なし)これを雪ン堂又城(しろ)ともいふ。児曹(わらべども)右の雪ン堂の内にあつまり物など煮(に)て神にもさゝげ、みなよりてうちくふ。又間(あひだ)にへだてを作りたるはとなりの家に准(なずら)へ、さま〴〵の事をなしてたはむれ遊(あそ)ぶ。あそび倦(うめ)ば斯(かう)作りたるを打こぼつをもあそびとし、又他の童(わらべ)のこれにちかくおなじさまに作りたるを城(しろ)をおとすなどいひてうちくるふもあり、そのまゝにおくもあり。おのれ牧之(ぼくし)も童(わらべ)のころはかゝるあそびの大将(たいしやう)をもせしが、むなしく犬馬(けんば)の齢(よはひ)を歴(へ)て今は夢(ゆめ)のやう也けり。

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