春にいたれば寒気地中より氷結あがる。その力礎をあげて椽を反し、あるひは踏石をも持あぐる。冬はいかほど寒ずるともかゝる事なし。さればこそ雪も春は凍て輴をもつかふなれ。屋根の雪を掘のけてつみ上げおくを、里言に掘揚といふ。(前にもいへり)往来の路にも掘あげありて山をなすゆゑ、春雪のこほるにいたれば、この雪の山に箱梯のごとく階を作りて往来のたよりとす。かやうの所いづかたにもあるゆゑに下踏の歯に釘をならべ打て蹉跌ざる為とす。唐土にては是を欙とて山にのぼるにすべらざる履とす、欙和訓カンジキとあり。
八十一 春寒の力
北越雪譜 原文
原文現代語訳