八十二 シガ

北越雪譜 原文
原文現代語訳

冬春にかぎらず雪の気物(きもの)にふれて霜(しも)のおきたるやうになる、是を里言(りげん)にシガといふ。戸障子(としやうじ)の隙(すき)よりも雪の気入りて坐敷(ざしき)にシガをなす時あり、此シガ朝噋(あさひ)の温気(あたゝまり)をうくる処のは解(とけ)ておつる。春の頃野山の樹木(きゞ)の下枝(え)は雪にうづもれたるも稍(こずゑ)は雪の消(きえ)たるに、シガのつきたるは玉もて作りたる枝(えだ)のやうにて見事なるものなり。川辺(かはべ)などはたらく者には髪(かみ)の毛(け)にもシガのつく事あり、此シガ我が塩沢(しほざは)にはまれなり。おなじ郡(こほり)の中(うち)小出嶋(こいでしま)あたりには多し、大河に近きゆゑ水気(すゐき)の霜となるゆゑにやあらん。

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