百十二 土中の舟

北越雪譜 原文
原文現代語訳

蒲原郡五泉の在(ざい)一里ばかりに下新田(しもしんでん)といふ村あり。或年此村の者ども㕝ありて阿加川の岸(きし)を掘(ほり)しに、土中(どちゆう)より長さ三間ばかりの船を掘いだせり。全体(ぜんたい)少しも腐(くさら)ず、形(かたち)今の船に異(ことな)るのみならず、金具(かなぐ)を用うべき処みな鯨(くぢら)の髭(ひげ)を用ひて寸鉄(すんでつ)をもほどこしたる処なし。木もまた何の木なるを弁(べん)ずる者なく、おそらくは異国(いこく)の船ならんといへりとぞ。余(よ)下(しも)越後に遊びし時、杉田村小野佐五右エ門が家にてかの船の木にて作りたる硯箱を見しに、木質(もくしつ)漢産(かんさん)ともおもはれき。上古漂流の夷船(いせん)にやあらん。

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