五 かけひき

怪談 現代語訳
原文現代語訳

処刑は屋敷の庭で行うようにと命じられていた。そこで男はそこへ連れて行かれ、広く砂を敷いた場所にひざまずかされた。その砂地には、いまも日本の庭園で見られるような飛び石が一列に並んでいた。男の両腕は後ろ手に縛られていた。家来たちが桶で水を運び、小石を詰めた米俵を運んできて、ひざまずいた男のまわりにぎっしりと詰めこみ、身動きできないようにした。主人がやってきて、準備のさまを見た。満足して、何も言わなかった。

突然、処刑される男が主人に向かって叫んだ。

「お殿さま、わたしが罰せられる過ちは、わざとしたことではございません。ただわたしがひどく愚かだったために犯した過ちなのです。前世の因縁で愚かに生まれついたので、どうしても間違いをせずにはいられなかったのです。けれども、愚かだからといって人を殺すのは間違っています――そしてその間違いには報いがあります。わたしを殺せば、必ずわたしは仇を討ちます。あなたが引き起こした恨みから、必ず復讐が生まれるのです。悪には悪が報いるでしょう」……

強い恨みを抱いたまま殺された者は、その幽霊が殺した者に仇を討つことができる。侍はそのことを知っていた。侍はたいそうやさしく――ほとんど猫なで声で答えた。

「おまえが死んだあとなら、いくらでもわれわれを脅かすがよい。だが、おまえが本気で言っているとは信じがたい。首を斬られたあとで、その大きな恨みのしるしを何か見せてくれるかね」

「きっと見せてやる」と男は答えた。

「よろしい」と侍は言い、長い刀を抜いた。「これからおまえの首を斬る。おまえのすぐ前に飛び石がある。首を斬られたら、その飛び石にかみついてみよ。おまえの怒れる霊がそれをやってのけたら、われわれの中には恐れる者もいるだろう……。石にかみついてみるか」

「かみついてやる!」と男はひどく怒って叫んだ。「かみついてやる!――かみついて――」

刃がひらめき、ひゅっと風を切る音がして、ばさりと鈍い音がした。縛られた体は米俵の上に前のめりになり、斬られた首から二筋の長い血が噴き出した。そして首は砂の上を転がった。重たげに飛び石のほうへ転がっていった。それから突然はね上がると、石の上の縁を歯でくわえ、一瞬必死にしがみついて、それからぐったりと落ちた。

誰も口をきかなかったが、家来たちは恐ろしげに主人を見つめた。主人はまったく平然としているようだった。ただ刀をいちばん近くにいた従者に差し出しただけで、従者は木の柄杓で刀身に柄から切っ先まで水をかけ、それから柔らかい紙で何度もていねいに刃をぬぐった……。こうして、この出来事の儀式めいた部分は終わった。

それから何か月ものあいだ、家来や召使いたちは、幽霊が出るのではないかと絶えずおびえて暮らした。予告された復讐が来ることを、誰一人疑わなかった。たえずおびえていたので、ありもしないものをたくさん見たり聞いたりした。竹やぶを吹く風の音を恐れ、庭の影が動くことさえ恐れた。とうとうみなで相談して、恨みを抱く霊のために施餓鬼の法要を営んでくださるよう、主人に願い出ることにした。

「まったく必要ない」と侍は、家老がみなの願いを伝えると言った……。「死にぎわの者の復讐の願いが恐れの種になりうることは、わしにもわかる。だがこの場合は、恐れることは何もない」

家老はすがるように主人を見たが、その驚くべき自信のわけを尋ねるのはためらった。

「なに、わけは簡単なことだ」と、侍は口にされない疑いを見抜いて言った。「危ないのは、あの男の最後の一念だけだった。わしがしるしを見せてみよと挑んだとき、わしはやつの心を復讐の望みからそらしたのだ。やつは飛び石にかみつこうという一念を固めて死んだ。そしてその一念は果たすことができたが、ほかのことは何もできなかった。ほかのことはすべて忘れてしまったに違いない……。だから、もうこの件について気をもむことはない」

――そして実際、死んだ男はもう何の祟りもしなかった。何一つ起こらなかったのである。

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