遠野物語
柳田國男(語り手 佐々木喜善) 1910年
概要
1910年刊。岩手県遠野郷出身の佐々木喜善が語った郷里の伝承を柳田國男が聞き書きし、序文と119の話にまとめた。山の神、天狗、山男・山女、河童、ザシキワラシ、オシラサマ、神隠し、狐、死者の霊など、村の人々が実際に見聞きしたこととして語る話を、短い文語文で淡々と記す。
時代背景
柳田國男は農商務省の官僚として各地を視察し、地方の暮らしと信仰に関心を深めていた。1908年、東京で佐々木喜善と出会ってその話を書き留め、翌々年、350部を自費で出版した。日露戦争後、近代化の波が地方にも及びはじめた時期で、序文の「平地人を戦慄せしめよ」には、都市の人々の知らない山の村の世界を突きつけようとする意志がこもる。遠野は早池峰山などの山々に囲まれた盆地で、沿岸と内陸を結ぶ市の町でもあった。
読みどころ
- 寒戸の婆神隠しにあった娘が、三十年あまり後の風の強い日に、老婆の姿で帰ってくる。そしてまた去っていく。「松崎村・登戸」を読む →
- ザシキワラシ旧家に住む子どもの姿の神。この神が去ると、家は衰える。「土淵村山口」を読む →
- カッパ淵馬を淵に引き込もうとして、逆に厩まで引きずられてしまう河童。「カッパ淵」を読む →
- 津波の霊明治の大津波で妻を亡くした男が、夏の夜の渚で妻の霊に出会う。妻は別の男と連れ添っていた。「田の浜」を読む →
- マヨヒガ山中に現れる無人の立派な屋敷。そこから持ち帰ったものは、幸運をもたらす。「小国」を読む →