古い家には、ザシキワラシという神が住んでいることが多い。たいてい十二、三歳くらいの子どもの姿で、ときどき人の前に現れる。
土淵村飯豊の今淵勘十郎の家では、高等女学校に通う娘が休みで帰っていたとき、廊下でばったりザシキワラシに出くわして、たいそう驚いた。まぎれもなく男の子だったという。
同じ村の山口の佐々木家では、母親がひとりで縫い物をしていると、隣の部屋で紙のがさがさいう音がした。そこは主人の部屋だが、主人は東京へ出かけていて留守だ。あやしいと思って板戸を開けたが、誰もいない。しばらく座っていると、今度はしきりに鼻を鳴らす音がする。さてはザシキワラシか、と思った。この家にザシキワラシがいることは、ずっと前から評判だった。
この神のいる家は、富み栄えて何不自由ないという。
*ザシキワラシは「座敷童衆」である。『石神問答』にもこの神の記事がある。
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ザシキワラシには女の子もいる。
山口の旧家、山口孫左衛門の家には、女の子の神が二人いると昔から言われていた。
ある年、同じ村の男が町からの帰り道、留場の橋のあたりで、見慣れない美しい娘二人に出会った。何か思いつめたようすでこちらへ歩いてくる。
「どこから来たんだ」
「おら、山口の孫左衛門のところから来た」
「これからどこへ」
「どこそこの村の、なにがしの家へ」
その家は、少し離れた村の、いまも羽振りのよい豪農だった。孫左衛門の家ももう終わりだな、と男は思った。
それからまもなく、孫左衛門の家では主人と使用人の二十数人が、きのこの毒にあたって一日のうちに死に絶えた。七歳の女の子がひとりだけ生き残ったが、その人も年老いて子もなく、最近病気で亡くなった。