日本霊異記

景戒(薬師寺の僧) 822年頃

概要

正式名『日本国現報善悪霊異記』。奈良の薬師寺の僧・景戒が編んだ上中下3巻、116話の仏教説話集。善い行いにはよい報い、悪い行いには悪い報いが、来世を待たずこの世のうちに現れる(現報)ことを、具体的な人と土地の話で示す。雄略天皇の時代から編者と同時代の嵯峨天皇の頃まで、おおむね年代順に並び、漢文で書かれている。

時代背景

奈良時代、仏教は国家の保護を受ける一方で、行基のように民間で布教する僧や、正式な許可を得ずに僧となった私度僧も多く現れた。景戒自身も妻子を持ち、暮らしに苦しんだことを下巻で自ら記している。因果応報の考えが庶民の間に広まっていく様子と、地方の村々の暮らしや信仰が、説話の向こうから見えてくる。

読みどころ

  1. 雷をつかまえた男天皇の命で雷を捕らえに行く栖軽。神と人がまだ近かった時代の、おおらかな冒頭話。「雷を捉へし縁」を読む →
  2. 「きつね」の語源美濃の男が迎えた妻は狐だった。正体が知れても「来つ寝よ」と呼んだので、きつねという。「狐を妻として子を生ましむる縁」を読む →
  3. 経を唱え続ける髑髏熊野の山中で、死んで何年もたつ髑髏の舌だけが朽ちずに法華経を誦む。仏教説話らしい奇蹟。「法花経を憶持せし者の舌、曝れたる髑髏の中に着きて朽ちざる縁」を読む →
  4. 情けある鬼閻魔の使いの鬼が、もてなしの恩に報いようと、身代わりの人を探してやる。冥界の役人の人間味がおかしい。「閻羅王の使の鬼、召さるる人の饗を受けて恩を報ずる縁」を読む →