七 那須

おくのほそ道 原文
原文現代語訳

那須の黒ばねと云(いふ)所に知(しる)人あれば、是より野越(のごえ)にかゝりて直道(すぐみち)をゆかんとす。遙(はるか)に一村(いつそん)を見かけて行(ゆく)に雨降(ふり)日暮る。農夫の家に一夜をかりて、明(あく)れば又野中(のなか)を行(ゆく)。そこに野飼(のがひ)の馬あり。草(くさ)刈(かる)おのこになげきよれば、野夫(やぶ)といへどもさすがに情しらぬには非ず、「いかゞすべきや、されども此野は縱横(じゆうわう)にわかれて、うゐ〳〵敷(しき)旅人の道ふみたがえんあやしう侍れば、此(この)馬のとゞまる所にて馬を返し給へ」とかし侍(はべり)ぬ。ちいさき者ふたり馬の跡したひてはしる。獨(ひとり)は小姫にて名をかさねと云(いふ)。聞(きき)なれぬ名のやさしかりければ、

かさねとは八重撫子の名成(なる)べし 曾良

頓(やが)て人里(ひとざと)に至れば、あたひを鞍つぼに結付(ゆひつけ)て馬を返しぬ。

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