越前の国境、吉崎の入江を舟で渡って、汐越の松を訪ねた。
終宵嵐に波をはこばせて
月をたれたる汐越の松 西行
(一晩じゅう嵐に波を運ばせて、その滴に月の光を宿して垂らしている汐越の松よ)
この一首で、この地の景色はすべて言い尽くされている。もし一言でも付け加えようとするなら、それは無用の指を一本立てるようなものだ。
丸岡の天竜寺の長老は古い縁があるので訪ねた。また金沢の北枝という人が、ほんのちょっと見送るつもりで、ここまで慕ってついてきていた。道々の景色を見過ごさずに句を考え続け、折々に心にしみる趣向を聞かせてくれた。いよいよ別れに臨んで、
物書て扇引さく余波哉
(夏の間使った扇に別れの句を書いて、二つに裂いて分け合う。その名残の惜しさよ)
五十町ほど山に入って、永平寺を拝んだ。道元禅師の御寺である。都から千里も離れて、このような山かげに寺を残されたのも、尊いわけがあってのことだという。