風も吹かないうちに散ってしまう花のように、移ろいやすい人の心に、慣れ親しんだ年月を思うと、しみじみと聞いた言葉のひとつひとつは忘れないのに、その人が自分とは縁のない人になっていくのが世のならいだ。それは、死に別れよりもまさって悲しいものである。だから、白い糸が何色にも染まってしまうことを悲しみ、道が分かれ道で別れていくことを嘆いた人もあったのだろう。堀河院の百首の歌の中に、
むかし見し妹が垣根は荒れにけりつばなまじりの菫のみして
(昔会った恋人の家の垣根は荒れてしまった。つばなにまじって菫が咲いているばかりで)
という歌がある。そのさびしい様子は、そうしたことがあったのだろう。